Tomoyuki Ichikawa

Interviewer Back number Interviewer=Tomomi Watanabe text=Kazuyuki Koenuma photographs=Kenji
HOME INTERVIEW > Interview File12
旅の途中、形なきものを売り続ける男
※掲載のインタビュー記事は、ポーターズマガジンVol.12(2011年11月)から抜粋したのものです。
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。
知的な雰囲気を漂わせる、ハンサムな細身のビジネスマン。そんな印象の市川だが、ひとたび口を開けば、裏表のない本音の喋りが次々と飛び出す。
会話の合間には豪快な笑い声を上げ、これでもかと大きく口を開けて笑う姿が印象的だ。
そんな屈託のない少年のような一面と同時に、溢れんばかりの情熱とガッツを持っているトップコンサルト・市川知之の素顔に迫った。

アメリカでスタートした人材ビジネスのキャリア

 人生はしばしば旅に例えられる。だが人材ビジネスにおける市川のキャリアが始まったのは、比喩ではなく実際に旅の途中だったと言っても過言ではない。広告代理店の営業マンとして20代を過ごした市川が、30歳という節目を迎えたときに取った行動は、あてもなく海を渡ることだった。
「30歳のときに会社を辞めて、知り合いもいないのにアメリカに行ったんです。全く何も考えていませんでしたね。しばらく毎日自由に過ごし、お金が少なくなってきたのでようやく仕事を探し始めました」
 無鉄砲だった行動を振り返っておかしくなったのか、市川は笑いながら当時の様子を話してくれた。パソナのグループ会社で副社長を歴任し、現在はパソナ本社でグローバル事業の責任者として忙しい日々を送っている市川。さぞかし着実にキャリアを積んできたのかと思えば、思いがけず風来坊のような経歴を歩んできたことに驚かされる。
「新聞社に営業として入社したのですが、2年ほど経って会社がアメリカから撤退することになってしまったんです。それが2003年ですね。その後、縁あってパソナに現地採用で入社しました。今年で9年目になるのですが、人生の中で一番長続きしている事です」
 市川は言い、声を上げて豪快に笑った。
 アメリカのパソナが行っていたサービスは人材紹介と派遣、アウトソーシング。市川は、企業のあらゆる人事ニーズのヒアリングから求職者の面接まで、全ての業務を一人でこなしていたそうだ。
 中でも目を見張るのは、営業に費やした労力だ。アメリカという異国の地にもかかわらず、市川は日本流の「飛び込み営業」で企業を訪問し続けたのだという。
「相当な件数を回りましたね。最近、当時の業務日誌を見ましたら、1週間に25〜30件は営業をしていたんです。なかでも飛び込み営業の場合はビルの最上階から順々に訪問していました。落下傘のように」
 約2年間の間、訪問した企業は実に約2000社以上! 訪ねたのは日系企業が中心だが、勤務地があった東海岸付近の企業はほぼ全て網羅したというから、市川のガッツのほどが伺える。
「ちゃんとアポを取ってください、と怒られたこともありましたが、そんなことは慣れっこでした(笑)。アメリカはコミッション(成果報酬)の世界なので、周りに仕事の仕方を教えてくれる人はあまりいないのですが、その代わり訪問先の企業の方から教えていただくことは多かったですね。若手はドンドンこういうことをした方がいいですよ」
 少々スパルタだが、若手へ向けて市川流のアドバイスまで飛び出した。伸び悩んでいる若手の方は、ぜひ実践してみてはいかがだろうか?

高まりつつあるアウトソーシングのニーズ

 市川が日本に戻ったのは2009年4月。日本のパソナで海外事業を統括すると共に新規拠点の立ち上げなどの役割を市川が任命されたのだった。以来、現在までグローバル事業に携わり続けている。
「今現在は中国、香港、ベトナム、韓国などのアジア地区に行くことが多いです。紹介業の営業も行いますが、駐在員の給与計算管理や労務管理などのアウトソーシングに特に力を入れていますね。現地に行って、現場社員の方々の声をヒアリングして、それをもとに決定権がある本社の担当にアプローチをします」
 現場の声を常に聞くことを心掛けている、という市川。この辺りは、アメリカ時代に飛び込み営業で培ったノウハウに通じるものがあるのかもしれない。
「地域や国によってニーズが異なる点が面白いですね。アメリカや香港やシンガポールなどではオペレーションがすでに安定しているので、私たちは効率化やコスト削減という切り口でソリューションを提案しています」
 一方、ベトナム、インドネシアやインドなどの新興国地域では、とにかく人材ニーズが高いのだという。 「若い人材が中心となって経済が回っている国なので、彼らをマネジメントする人材が不足しています。人材紹介のニーズもありますし、若い人材を対象に基礎的なビジネストレーニングやリーダー研修を行ってほしいというニーズもたくさんあります」
 アウトソーシングの場合、業務を請け負うのは主にパソナの自社社員。スペシャリストが必要な場合は、業務提携をしている現地や日本の企業に依頼するのだという。その辺りの交渉や手配も全て市川の業務領域だ。  ちなみに現在、パソナとしては海外の日系企業に対して、アウトソーシングサービスの提案を強化しているそうだ。
「必要な人材がアシスタントレベルであれば、国によって離職率が高いことがあるので、採用しても業務が安定しないことが多くあります。これは、我々紹介業にとって有利に働く面もありますが、クライアント企業の本質の解決策にはならない。そのため、出入りが多いポジションに対しては、アウトソースをすることが効率化とコスト削減のためになりますよという提案をよく行っています」
 ワンストップサービスの提供ができるアウトソーシングは、元々アメリカのパソナが始めたサービスである。アメリカ特有である、専門外の業務を人に任せるという文化を、中国やインドなどのアジアで上手に展開していきたいというのが市川の展望だ。
 国や地域によって経費や物価が異なるため、具体的な売り上げ数値の目標を設定するのは難しいとのことだが、「来年度は新たなアジア圏のほかに、ブラジルなど南米も視野に入れていきたいです」と市川は海外事業の展開にさらなる意欲を覗かせた。
2次へ
市川知之

市川知之(いちかわ・ともゆき)

法政大学法学部卒業後、広告代理店勤務を経て、2001年ニューヨークに渡り、新聞社に就職。2003年にPasona NA, Inc.に転職し、Vice Presidentとして全米の営業を統括。2009年4月に帰国し、2010年12月より現職に。

[Corporate profile]

株式会社パソナ

創業以来「社会の問題点を解決する」という明確な企業理念のもと、年齢・性別を問わず、誰もが自由に好きな仕事を選択でき、働く機会を得られることを目指してさまざまな社会インフラを構築。誰もがそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方で、豊かな人生設計を描ける社会を創ることをグループの社会的責任としている。