Srinivasan Ramanan

Interviewer Back number photographs=Kenji Sakurai Interviewer=Tomomi Watanabe text=Kazuyuki Koenuma
HOME INTERVIEW > Interview File34
人に寄り添うことが成功の法則
※会社名、所属部署名、役職はインタビュー当時のものです。
アジアはインド、南部の都市チェンナイで生まれたクリシュは、常にトップを走り続けている。中学〜大学まで首席で卒業し、1996年から携わっている人材ビジネスの世界でも、圧倒的な成績を残し続けた。プライベートで突如降りかかった悲しみを乗り越え、新天地でこれまで以上の輝きを放つ彼は、確固たるビジネス哲学と成功を手繰り寄せるテクニックを持つ。世界標準のコンサルタントは、ロジカルに、情緒的に、ときにユーモアを交えながら、言葉を紡いでいった。

ITと金融の知識を生かしてトップコンサルへ

 本当は自分自身について語ることは苦手なんです。インタビューの冒頭、クリシュはそう口にした。その理由として続けた言葉が、彼の性質を表しているようだった。
「自分のことよりも、私の師やクライアント、求職者や仲間について話すことの方が好きなので」そう言って笑顔を見せる。でも観念しますよ、何でも聞いてください、と言わんばかりに。
 大学で経済学を専攻していたクリシュは、在学中に株式市場や資金調達に興味を持ち始め、授業が終わると株取引のサブ・ブローカーの仕事に従事した。大学卒業後はITの世界に関心を持ち、金融業界向けのシステム開発に携わる。そんな中、ITと人材ビジネスを行っている企業から声をかけられ入社し、二つの業種に携わることになった。人材ビジネスの分野でクリシュが担当したのは、アメリカのIT企業への人材紹介。平均で年に40〜60件の成約を挙げていたという。ITの分野でも、金融機関向けのソフトウェア開発のプロジェクトに関わるうちに、クライアントから金融に関する知識を認められ、金融業界の人材を紹介して欲しいと依頼されるようになった。2001年にはシンガポール拠点の立ち上げメンバーに抜擢。新拠点をゼロから設立して軌道に乗せるも、同社とのビジネス観の相違から転職することに。その後はシンガポールのアウトソーシング会社へ転職し、ITや金融分野にフォーカスして派遣スタッフの管理を行った。インドネシアに初めて訪れたのもこの頃だった。当時、人材派遣のマージンは大きく、売上げも収入も拡大。シンガポールが気に入り市民権も取得した。全てが順調に進んでいたが、クリシュはまだ満足していなかった。

喪失を乗り越え、インドネシアで新たな人生がスタート

 そこで私の旅は終わりませんでした。彼独特の言い回しで、クリシュは自らの転機について語る。
「全てにおいて自身で行き着けるところまでたどり着いたので、これ以上は成長できないと感じたのです。そんなとき、友人から『自分でビジネスを始めたらいいじゃないか』と勧められ、迷った挙句、友人数名と会社を始めました」
 2007年7月のことだった。事業はコンサルティングとエグゼクティブ・サーチ。ITと金融に強みを持っていたクリシュだったが、様々な業界に関わるうち、あらゆる分野で学習曲線が伸びていった。同時に人材ビジネス向けのソフト開発も行い、2008年から販売をスタート。オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、香港に2000社以上のユーザーを抱えるようになった。
 だが2013年8月、彼は唐突に歩みを止める。妻の死という、人生で最も大きな挫折に直面したことが原因だった。3歳のときに知り合って以来、ずっとクリシュを支えてきた妻。その喪失感は言い表せないほど大きく、くじけてはいけないと幾ら言い聞かせても、その思考は停止したままだった。翌月、所属していた会社から離れ、休暇を取ってジャカルタを訪れたクリシュは、ソフトのクライアントであり、知り合いでもあったJACインドネシアのマネージング・ディレクターに連絡をする。事情を知った彼女は、無条件でクリシュを雇用した。多忙な仕事が、結果的に彼を早く立ち直らせることになった。
「彼女は私をとても忙しくさせました(笑)。けれど、おかげでようやく私の集中力も戻ったのです。私はインドネシアに来て間もないですし、それほど人脈も持っていませんでした。そのため時間と努力を費やして、最初の成約を一ヶ月で挙げたのです」
 危急の際の友こそ誠の友である、という言葉がある。その通り、サポートが必要なときに、支えてくれる人を非常に尊敬しているのだとクリシュは話す。自らの育った文化や家庭が、まさにそうだったからだという。現在、彼は同社でチームを率いるリーダーの一人だ。任せられる仕事も多く、目標を達成しなければいけない責任もある。だが、もう立ち止まってはいない。「何が起きても人生は続きます。それに、私はここにいることをとても誇りに思っていますから」

常に言い聞かせるのは“お客様は神様である”

 お客様は神様である。日本人にとって馴染み深い言葉だが、実はクリシュも、マントラ(神秘的な威力をもつ呪文)として自分に何度も言い聞かせているのだという。お客様とは、クライアントと求職者、双方のことを指す。
「この業界では、一方でクライアントと、もう一方では就職希望者と親しくする必要があります。例えば私たちは、クライアントから送られてきた1枚の紙からだけではなく、『なぜ、どのように、どこで、誰と、何を』と多くの質問をして、たくさん知識を得ようとします。交流を通じ、『私たちはあなたのそばにいます』と伝えることで、彼らから信頼を受け、それが多くの成功に繋がるのです」
 こんな事例があった。ある大企業が営業マンを求めていたとき、クリシュは適切な候補者を探し、企業との面談を設定した。三度のインタビューは問題なく進み、このまま成約に繋がると思っていたところ、最終面接で社長がNOを出した。その理由を知るために、電話やメールではなく、直接会いに行って尋ねたのだという。「このマッチングは完璧で、100%大丈夫です。理由を教えていただけませんか?」すると、求める人種ではなかったから、という理由が明らかになった。人種差別に繋がる可能性のあるデリケートな理由のため、通常であればメールや書面はおろか、電話でも明かされることはないだろう。しかし会いに行くことで信頼関係を築き、初めて知ることができた情報だったのだ。同様に、求職者に対しても信頼関係を築き、良いサービスを提供することで、新たな求職者を紹介してくれるメリットがある。その場合、電話で人材開拓をするより、1000倍も上手くいくという。そして、さらに人脈が広がっていくことが見込めるため、お客様を神様のように大切に接する必要があるのだ。
2次へ
Srinivasan Ramanan

Srinivasan Ramanan(Krrish)

1974年チェンナイ出身。マドラス大学経済学部卒業後、コマーシャル大学 商学博士号取得。大学在学中よりMadras Stock Exchangeで株取引のサブブローカーの仕事に従事。卒業後は金融の経験を活かし金融業向けのITシステム開発会社に入社。その後、ITを人材ビジネスを行っている企業の縁からアメリカのIT企業への人材紹介、平均で年間40〜60件の実績を誇る。2013年11年より現職。

[Corporate profile]

JAC International Indonesia

2002年、ジャカルタにて設立。グループで世界10カ国に拠点を置き、そのうち9カ国はアジア諸国で展開。アジア圏における日系インターナショナル人材紹介会社としては最も長く、豊富な実績を持つ。